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意味論は、主に二つの学問領域を指して用いられている。一つは言語学で自然言語の意味を扱う下位領域である。もう一つは数学において、形式面を扱う証明論とともに数理論理学を構成する下位領域である。さらに一般意味論というものもあるが、言語の使用に関する倫理を扱うものであり、一般には意味論には含めない。

自然言語(natural language)とは、人間によって日常の意思疎通のために用いられる、文化的背景を持って自然に発展してきた記号体系である。大別すると音声による話し言葉と文字や記号として書かれる書き言葉がある。

言語学において意味論は、語・句・文・テクストといった記号列(文字列)の構成について論じる統語論と2大分野として対をなす、その記号列が表す意味について論じる分野である。また、実際の発話や文脈に依存した記号の使用に関わる語用論とも対置される。 統語論と意味論の切り分けについてよく示す具体的な文例がある。 Colorless green ideas sleep furiously. という文は、「非文」ではない文、すなわち名詞や動詞がおかしな所にあったりはしない、統語論的には問題ない文であり(詳細は対象の記事を参照のこと)、実際にたとえば Big furious bears ran quickly.[1] という文は普通に意味をとれるだろう。それに対し問題の文は「色の無い緑」「緑のアイディア」「アイディアが眠る」「猛り眠る」など、どれもまともに意味のあるように意味をとるのは難しいわけだが、この違いがどこにあるのか、といったようなことを議論するのは(統語論ではなく)意味論の側ということになる。 意味は、大きく次の二種類に分類されることが多い。第一に、記号が対象や状況に対して持つ関係。 第二に、記号がほかの記号(特に概念と言われる心的記号)に対して持つ関係。前者は指示的意味(reference)、後者は内包的意味(sense)などと言う。 これら二種類の意味に加え、意味論は伝統的に、真理条件、項構造、主題役割、談話分析などを研究してきた。これら全てと統語論を結ぶことも意味論の課題である。

語用論とは、理論言語学の一分野で、言語表現とそれを用いる使用者や文脈との関係を研究する分野である。運用論ともいう。自然言語は一般に、発話された場面によって指示対象が変わる「あなた」「ここ」「明日」などの直示表現(ダイクシス)をもつ。また、例えば「すみません、今何時か分かりますか?」という発話は、形式の上ではyes/no疑問文であるが、意図されている内容は明らかに時刻を教えてほしいという依頼である。これらの現象が語用論の研究対象となる。語用論は1960年代の哲学者ジョン・L・オースティンの発話行為の研究に端を発し、ジョン・サールによる適切性条件の議論や、ポール・グライスによる協調の原理の解明によって一定の到達点に達した。その後は、グライスの理論を批判的に継承したディアドリ・ウィルソンとダン・スペルベルによる関連性理論と呼ばれる枠組みが展開されている。語用論は統語論などの研究者から見れば枝葉の研究と見なされがちである一方、実際の使用と切り離して文法や意味の理解に至ることはできないという立場をとる研究者もいる。

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