IRIS

5か月ぶりの帰省



ブルートレイン富士で翌朝、東京駅に到着し、そのまま学校に向かい下船の報告をして乗船実習が終了した。同じ会社で実習中の同僚のY君は下船前の社船連絡でインドを出港しマラッカ海峡を日本に向け航行中なので帰るのは10日後くらいだろう。久し振りに下宿に戻ったが、下宿の小母さんに小倉で買ったお土産を渡し、今日は下宿で過ごして明日、5か月ぶりに田舎へ帰る予定だが、春休みに同じ下宿の同僚のY君の故郷の和歌山県の串本へ遊びに行きお世話になった。夏は私の田舎に来ることになっているが、私は一足先に帰る事と... 続きを読む
東シナ海を航行中の本船の前方に九州の島影が見えてきた、 懐かしいねー! 五島列島の島々を眺めながら玄界灘、そして北九州の工業地帯の煙突などが見えるようになってきた、だんだんと工場の建物が大きくなり、タグボートに押されて静かに八幡製鉄(現新日鐵住金)戸畑工場の専用岸壁に着岸した。すぐに検疫官、代理店が乗船してきた、パーサー(事務長)が作成した書類関係を提出し検疫が終了し、続いて税関が二人乗船して入港手続き、乗組員の陸揚げ携帯品の通関作業があり、すべてが無事終了した。
入港手続きが終わると本社... 続きを読む


台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通過した本船は先島諸島から東シナ海に入った。昼食時にメスルームのテーブルマスターのセコンドオフィサー(2等航海士)から、夕食時に気持ちだけだがアップさんの送別会をしよう、、と話があった、送別会と言っても、船は航海中は当直が有り日曜もなにもない、午後の当直が終わりメスルーム食堂に行くと、テーブルにはビールが並べられていた。夕食のご馳走とは別に、刺身の盛り合わせ、乾き物の盛り合わせが、これは司厨長から特別に、ということだ、、テーブルは2等航海士、3等航海... 続きを読む


マレーシアのズングンを出港して2日目、午後の当直中に本社より1通の電報がきた。 ジコウツミチ、ゴアニヘンコウ、ジッシュウセイ○○○トバタニテゲセン(次航積地ゴアに変更、実習生○○○戸畑にて下船)、もう一航海、マレーシアに行く予定が次航はインドのゴアに積地が変更になったわけだ、、次席さんが、おい、アップさん、戸畑で下船だぞ! 次航インドへ行くと日本に帰るのは9月の中旬ころになってしまう、後期の授業が始まっている、私は次航も乗船したいんですが、本社に話してもらえませんか、、会社より学校に話した方... 続きを読む


沖待ちを含めて6日間マレーシア東側のズングンという小さな町に停泊したが、鉄鉱石約2万トンの積み込みが終わり、福岡県の八幡製鉄所戸畑工場(現新日鉄住金)へ向け出港した。佐渡航路の小さな船と青函連絡船しか船に乗ったことはない、もちろん外国航路の大型船は初めての経験、海外も日本以外は初めての経験だ。30分もするとマレーシアの島影は見えなくなり、どっちを見ても海、海、海、1週間の航海が始まった。甲板部は総出で荷役で汚れたデッキを海水で洗い流している.。同僚のY君は同じ会社で実習中だが、社船連絡によ... 続きを読む


荷役が始まってからは午前中は無線室で無線設備のマニュアルを読んだり宿題のレポートを書いたりして過ごす。午後からはすっかりあじをしめて連日上陸だ、免税のタバコを2~3箱を持って上陸する、バンスした外貨はみんな使っちゃったネ、、1軒の小さな土産物店らしき店に入ると椰子の実で作った猿の置物が目にとまった、こっけいな格好をした猿の置物で、ほしいんだがお金が無い、店の主人らしい男がさかんに勧めるが、お金が無い!と言っても信用しない、そのうちに、お金が無いのなら私が着ているポロシャツで良い、と言... 続きを読む

荷役が始まる


 5日間ほど沖待ちをしたがようやく本船の荷役の順番が回ってきた。荷役と言っても着岸するわけではない、少しだけ陸地の方に移動して又アンカー(錨)を降ろした(写真)。たくさんの現地のステベ(人夫)が本船に乗船してきた。船倉のハッチハッチが開けられ直に荷役が始まった。鉄鉱石を積んだ艀(はしけ)を曳き船が本船の横まで曳いてきて、本船のウインチで船倉に積み込むわけだ。蒸気ウインチのワイヤーが音をたてて巻かれたり緩めたりウインチマン... 続きを読む

初めての外国

マレーシアの南シナ海に面したヂュングンの沖にアンカーを下し発光信号で打ち合わせの通り翌日、通船で上陸した。生まれて初めて外国の地を踏んだわけだ。○○川丸の乗組員は既に近くの広場で野球の準備をして待っていた。船の乗組員はみな運動不足だ、野球の試合と言っても遊びだ、打てばエラー、投げれば暴投、走れば、すってんころりん、野球をやっていると現地の子供や大人がつぎつぎと集まってきた。2日目は久しぶりの野球ですっかり楽しむことが出来た。翌日になり○○川丸に鉄鉱石の積み込みが始まった、3~4日くらいかかるようだか... 続きを読む


朝あまりにもの静けさで目が覚めると本船のエンジンが止まっている、エンジンの振動の中で生活しているとエンジンが止まると逆に静かで目が覚める。ポールド(窓)のカーテンを開けてみると遠くの陸地に椰子の木ようなものがたくさん見える、おー、これがマレーシアか、生まれて初めて見る外国の地だ、、、本船はマレーシアのクアラ・デュングンの沖合にアンカーを下している(写真)。朝食を食べにメスルーム食堂に行くとセコンドオフィサーが今朝4時過ぎに沖に着いたとの事。すでに大手海運会社のグループ会社の○○川丸が... 続きを読む

南シナ海ど真ん中



バシー海峡を通過し本船は南シナ海に入った。時々空が真っ黒になりスコールが降るが、あとは晴天だ、たまに水平線に大型船が見える以外は海、海、海、、午前中の当直が終わり昼食を食べて又午後の当直に入る、さいきん株で儲けたせいか機嫌の良い次席さん、アップさん、ブリッジにでも行って肩を振ってこい!という。さっそくブリッジに上がるとセコンドオフィサー(2等航海士)は双眼鏡を覗いている、黒く日に焼けた顔にサングラスをかけて、なかなかかっこいい、クオーターマスター(操舵手)はウイングに出てペンキ塗り... 続きを読む