IRIS
赤道を通過した本船は順調な航海を続け、いよいよ日向灘に入り、間もなく本船の前方に水の子灯台が見えてきた。ブリッジに顔を出すと33日振りに見る日本の島影も見えてきた。今航も1航海が1ヶ月を過ぎているのでアルコール類1本、タバコ200本などは免税で携帯品として陸揚げできる。昼食時に通関する携帯品を食堂に持参してもらう旨船内放送で周知し、持参した携帯品を申告してもらった携帯品リストでチェックするのは私の仕事だが、出し忘れたり持ってこなかったり、申告と違っていたり結構手間がかかる。私はコニャック1本、タバコ200本、シャネルの香水1本通関する事にしている。午後2時過ぎに日本鉱業佐賀関精錬所(写真)の専用岸壁に着岸し入港手続きが始まった。手続きが終わるといつもの事だが新しく乗船する乗組員、訪船した家族などなどで船内はごった返す。
  夕食を食べてシャネルの香水を持って上陸だ。夜になるとたまに税関が作業服を着て未通関の物を持って上陸しないか見張っていることがあるが当社は悪い評判は無いので比較的監視も緩やかだがね。町内のよく行くスナックに寄ってみた、司厨部の乗組員がよく顔を出すお店だが、いたいた、ボーイさんが二人、1時間ほど遊んで二人と別れタクシーに乗り大分市へ。地元の人は大分に行くのにタクシーなど使う人はいない、運転手は上機嫌だね。前回に行ったキャバレー○○へ、まだまだ夜は長い、次はスナックへ、明日もあるし今日はこの辺で帰るかね、、船に戻ったら午前3時過ぎ。船では徹夜で荷役作業が行われている、シャワーを浴びてポールドを覗くと東の空が薄っすらと明るんできた、サー寝るかね。目覚ましで8時起床、直ぐにサロン食堂へ行き朝食、未だ昨日と言うより今朝の酒が残っている、午前中は無線室で書類などの整理、午後から他の乗組員二人と1年に一回の健康診断の為タクシーで現大分市の○病院へ、一通りの検査が終わり先生の診断だ、 ○○さん、検査の結果ですが急性肝炎、黄疸、で検査結果は不合格ですね! 船員手帳の検診結果の合否欄に不合格と記載、 ハー、先生なんとかならないんですかねー! 下船して精密検査を受けて下さいね! 直ぐに船に戻り通信長に報告、社船の乗組員名簿、休暇中の身分などを調べると下船中の2等通信士、3等通信士には自宅待期の乗組員はいない、通信長が、次席さん、交代はいないよ! キャプテンに報告すると無線室にやって来た。キャプテン、私は別に悪くないので乗船します、、するとキャプテンが、次席さん、気持ちは解るが船長として病気の乗組員を乗船させておくわけにはいかんよ、会社に電話して何とか出港までには交代を探してもらうよ! 内心、えらい事になったなー、、二日後の朝には出港予定だ。翌日の午後キャプテン宛に本社の船員課から電話が来た。交代が手配付かず私の一期後輩の○○○君が代わりに乗船してくるとの事で、朝一番の飛行機で羽田をたち11時前に乗船できると言う、無線の免許を取得したばかりで未だ乗船経歴が実習以外になく海技免状は無いとの事だ。キャプテンが、局長、大変だろうが一航海たのむわ!との事。通信長の機嫌は悪そうだが、、、キャプテンが去ると、次席さん、早く治して次航また本船に戻ってこいよ、いいか! 参った参った。さすがに今晩は飲みに出るわけにはいかない、夜は下船の準備をして部屋でしょんぼり、、3日目の朝サロン食堂で下船の挨拶、隣のセコンドオフィサー(2等航海士)が、次席さん、病気って何処が悪いの、人一倍元気じゃないか! 荷役作業もほぼ終了したとの事で、キャプテンがサロン士官に私の交代が11時前に乗船するので、乗船次第出港する旨の指示を出している。随分と迷惑を掛けちゃったなー、、10時半にタグボートも2隻やって来た、船内放送で、出港用意、艫、艏スタンバイ! 号令がかかった。船首、船尾のホーサー(ロープ)が一本を残して外された、11時5分過ぎ1台のタクシーが構内に入り本船のタラップに横づけした。後輩のA君がタラップを登って来た、やー、先輩、大丈夫ですか! 無線室へ連れて行き、通信長に紹介し荷物を取ってタラップを下りた、同時にタラップが巻き上げられホーサーが外され本船は2隻のタグボートに曳かれて岸壁を離れた。暫く岸壁で3航海お世話になった佐賀丸を見送り、待たせておいたタクシーに乗り空港へ向かった。
 

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