
雪国の華やかな雛祭りに合わせて作られる素朴な菓子がある。最上地方の「くじらもち」。海から離れたこの地域からはおよそ連想しにくいユーモラスな名前が人々を引き付ける。名前の由来もこの地域に入ってきたルーツも諸説あるが、確固たる根拠はない。地元の人は「それが余計に面白い」と言う。
名前の由来は、生魚が手に入りにくかった最上地方で珍重された塩クジラに似ているから、という説が有名だ。「久持良」という漢字を当てる説もある。武士の戦陣の食料として活躍した歴史から、「久しく保存できる良い餅」の意味が込められている。
一方、ほかの地域から伝わってきたという見方もある。一つに、中国から伝来した説がある。長崎に入ってきたくじらもちは北前船で日本海を北上、最上川舟運で新庄藩まで運ばれたという。もう一つ、朝鮮通信使接待役を務めた新庄藩主が、歓迎の御膳(ごぜん)で味わい、藩に持ち帰ったという説が伝えられている。