[文法] 「へ」と「に」

2016-11-21

【国語辞典】
​「へ」は「動作の方向・向けられる対象・帰着点」を表す  
「に」に「場所・方角・到達点」を示す

【日本語の教科書】
「へ」は動作の方向を表す    「方向」
「に」は到着点を表す       「目的地」

【国際交流基金】
『基礎日本語学習辞典』では「に」の用法として「移動の方向や到達するところを表す」としたあとに、「移動の方向を特に意識して言う場合には「へ」を使うこともある」と注記しています。

【年代別】
年配者:「東京へ行く」「うちへ帰る」「田中さんへ渡す」
若い人:「東京に行く」「うちに帰る」「田中さんに渡す」

【への道】
「東大への道」とはいうが「東大にの道」とは言わない。理由としては、「へ」のほうが「移動の方向」に加え「過程」も含むのに対し、「に」は「目的地」という意味合いが強くその分「過程」の部分を指していないということが影響していると思われる。


【NHK放送文化研究所】方向を表す「に」と「へ」
Q 台風の進路を伝えるときは、「北に向かっている」と「北へ向かっている」のどちらがよいでしょうか。
A どちらも使えますが、どちらかというと「北へ向かっている」のほうがいいかもしれません。

<解説>
 「北に向かっている」と「北へ向かっている」の「に」と「へ」は格助詞で、いずれも、「向かう」という移動を表す動詞の到達点や方向性を示しています。一般的に、「に」が到達点そのものに焦点が当てられているのに対して、「へ」はそれよりも広い範囲、つまり到達点とともにそれに向かう経路や方向性に焦点が当てられています(『みんなの日本語事典』参考)。
 台風の進路を伝える場合は、台風が向かう到着点が決まっているわけではなく、重要なのは「向かう方向」なので、どちらかというと「北へ向かっている」のほうがいいかもしれません。しかし、こうした「に」と「へ」の意味の使い分けは現代では、たいへんあいまいです。

 『日本語文法大辞典』によると、「へ」は、もともとは、名詞、特に場所を示す語に付いて、「道の辺(へ)」「浦の沖辺(へ)」などと用いられた名詞「へ(辺)」が格助詞に転成したもので、奈良時代から平安時代にかけて成立したとあります。移動の意を持つ動詞とともに使われ、その動作の方向を示す働きが本来のものでした(万葉集の「新羅へか家にか帰る壱岐の島行かむたどきも思ひかねつも<新羅へ行くか家に帰るか、行く手がかりも思いつかない>」には、本来の「へ」と「に」の使い分けが示されています)。それが、平安時代中期頃からは、「へ」が、本来、動作の帰着・到着点を示す格助詞「に」の用法に侵入して、「帰着・到着点」を示すようになり、現代の「に」と「へ」の使い分けのあいまいさにつながっていると、同辞典では解説しています。

 「明日、東京へ行く」と「明日、東京に行く」では、意味を伝えるうえでは、どちらを使っても支障はありません。しかし、「へ」を使った前者は「方向としての東京」を示すのに対して、「に」を使った後者には、「ほかのどこでもない、東京」という到着点が強調されるニュアンスがあります。
 また、『明鏡国語辞典』(第2版)では、動きの展開をする方向を特に表す「前へ前へ突き進む」「公益法人、民営化の方向へ」などでは「に」は不自然になるとされています。場面によっては、こうしたニュアンスを考慮して、「へ」か「に」かを選ぶことも必要でしょう。

メディア研究部・放送用語 滝島雅子


 

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