2008-10-06

[東北] 多重人格・シビルの記録より

春は彼女の祖母のことがあっていやだった。夏が近づきつつあったが、夏はダニーのことがあっていやだった。正面階段に腰かけたり、ブランコにのったりして、シビルはよく、ダニーの出発につながる夏のことを思い出したものだった。

2008-10-05

[東北] 多重人格・シビルの記録より

詩に興味を抱いていたメアリは、大げさな表現で、シビルにとっては偉大なる世界精神がときどき活動を停止し、そういうときはシビルにとっては生き生きとした森も、青々とした牧草地帯もなく、忘れ去られた不毛の荒地しかないのだ、とビッキーに訴えた。「シビルはそれを無と呼んでいるの。そんなの、私たちにとってはあまりうれしくないわ!」

2008-10-04

[東北] 多重人格・シビルの記録より

メアリはいぜんとして6年生のあいだときどき現れたが、ほとんどの時間そこにいたのはビッキーだった。6年が終わるころのある日、学校へ行く途中、シビルがやって来た。彼女は、自分を、幻想のなかのビクトリアがそこへつれて来たように感じた。しかし、今度の復帰には、5年への復帰ほどのおどろきはなかった。シビルはやはり、時間を〝おかしい〟と考えたが、こんどは前とくらべるといくらか気が楽だった。

2008-10-03

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「病気だよ」ハッチーはメアリのために肌につける布切れを用意しながら言った、「女だけが経験するんだよ。おとうさんにはだまっているんだよ」。そして、ハッチーはこうつぶやきながら大股で寝室を出て行った、「女の災難だよ。災難。男も経験するといいんだ。それが当然というもんだ。男にとってね!」

2008-10-02

[東北] 多重人格・シビルの記録より

新しいバスルームでメアリは、自分の下着に〝あの褐色がかった赤いもの〟とのちに彼女が述べた者を見つけて真っ青になった。彼女は、子宮癌を患って出血した彼女の祖父を思い出して、自分も死ぬことになるだろうかと不安になった。「いつまでそこにいるの?」とはっちーが呼んだ。「いま出るわ、マム」とメアリは答えた。

2008-10-01

[東北] 多重人格・シビルの記録より

自分の両親とドーセット家を比較して、彼女は自分の幸運にほとんど罪悪感を抱いていた。彼女は、自分がこの家族からはなれてゆく前に、シビルにできるかぎり多くのーつまり、外部の正解や彼女の内部の人々が許す限り多くのー幸せな日々をもたらすように取りはからうことにしようと心に決めた。かわいそうなシビル、とビッキーは思った。

2008-09-30

[東北] 多重人格・シビルの記録より

偏狭、いなか者、鈍感は彼らのためのことばだった。13歳でも彼女のほうが彼らよりおとなだった。彼女は、彼らと自分は別の世界に住んでいるのだと確信した。シビルの両親に関しては、、、そう、父親はまあまあだったが、それでも彼には気がつかないところがあった。事実、彼は自分の新聞と設計図に夢中になっていて、なにかがおこってもそれに気づかないほどだった。

2008-09-29

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ビッキーは思った。シビルが私のことを知らずに、私がその名前をもらってきたあの想像上の少女のことをまだ考えつづけているというのは悲しいことではないか?シビルが、彼女の内部に住んでいる人たちの誰のことも」しら内でいるのはさびしいことだ、と。学校の第一日目に、これまで沈黙の観察を通じて吸収した、数学をふくむ全科目をみごとにこなして、ビッキーは自分の新しい存在に希望を抱いて家に帰った。

2008-09-28

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ペギー・ルーはシビルよりもはるかにこどもたちと同じだった。ビッキーは、確信はなかったが,これはあの死のあと何年かの娘ペギー・ルーがシビルよりもはるかに良くハッチー自身に似ていたからだと思った。また、シビルの復帰にあたって、ミセス.ドーセットがペギー・ルーではないシビルをちがった人間と見たのを観察するのはおもしろいことだった。

2008-09-27

[東北] 多重人格・シビルの記録より

時々、ビッキーは、メアリー・ドーセットの墓穴のところでペギー・ルーにあとをまかせたことを悔やんだ。だがビッキーは、そのときはーそしてその出来事を思い出すときにはいぜんとしてーほかの有効な方法がなかったt思った。それに、メアリー・ドーセットは愛すべき人ではあったが、自分のおばあさんではなかったし、自分があの気味悪い思慕とにみずからまきこまれるいわれはなかったのだと、自分を納得させもした。

2008-09-26

[東北] 多重人格・シビルの記録より

どこかへいっしょに行かないかと誘われると、彼女は隠しごとでもしているように、「だめよ」と答えた。そして走り去るのだった。まもなく、だれも彼女に、どこかへ行こうとか、なにかしようとか言わなくなってしまった。ビッキーは、ペギがみずからほかのこどもたちと疎遠になったのは、彼らがきらいだったからでなく、彼らと一緒にいると彼らがもっているものー兄弟や姉妹のいる家、こわがる理由がなにもない家ーを自分がもっていないことに怒りをおぼえるからであることを知っていた。

2008-09-25

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「ダニーは行ってしまったわ」とビッキーはそれしか言わなかった。「それに、お父さんの言うことをきくのはいいことだからね」とハッチーは注意深くその判断から自分自身を排除して報告した。ビッキーは考えた。シビルが彼女の父親のしたことを知らずに済むのはいいことだ、と。「それじゃ、帰りましょう」とハッチーは言った。

2008-09-24

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「おまえは、お父さんが2、3ヶ月前、ダニーの父親と話をしたのを知らないだろう。お父さんは、私たちと宗教のちがうマーテイン家のような人たちとおまえがつきあうのはよくないことだと彼にはっきり言ったんだよ」ビッキーは顔をしかめた。マーテインの家は、ハッチ—・ドーセットその人が改宗するまえと同じメソジストだった。ウイラードドーセットはメソジストと結婚したくせに、自分の娘がその同じメソジストと友だちになるのに反対した。なんたる偽善!だが、ビッキーはなにも言わなかった。

2008-09-23

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ドーセット家の2倍の大きさのステックニー家の前を通りながら、ハッチーは鼻であしらうように言った、「年寄りのステックニーは老いぼれだ。早く死んじまえばいいのに」。歩きながら、ハッチーはエラベーンズのことについて話し、「町のなかで、ある教師とけがらわしいことをした」んだから「当局によって逮捕されるべきだ」と言い、リータ・ステットについて話した。

2008-09-22

[東北] 多重人格・シビルの記録より

もし、荷物が着いていなかったら、ミセス・ドーセットは自分を非難するだろう。あの女ー彼女にとっては母親でないーのことはなにもかもしっているんだから、とビッキーは思った。シビルがなにとか彼女に対抗できるように何年も力をかしてきたんですからね。家に帰ってミセス・ドーセット煮荷物を渡すとすぐ、ビッキーは裏口の階段を降りて、ブランコのところへ行った。

2008-09-21

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ビッキーは、シビル・イザベル・ドーセットの障害に起ったことを、シビル自身がそこにいたかいないかにかかわりなく、知っていた。逆説的に、この世に住んでいたシビルにとっては時間が非連続的であったが、存在の奥深いところにいたビッキーにとっては、それは連続的だった。シビルにとっては気まぐれでしばしばブランクだった時間が、ビッキーにとっては恒常的だった。全部の回想をもっていたビッキーは、シビル・ドーセットのばらばらな内面世界における記憶記録装置の役割を果たしていた。

2008-09-20

[東北] 多重人格・シビルの記録より

しかし、あのときは、ほかにやりようがなかった。というのは、ビッキーは、影の力でいるときは過ぎ去り、積極的に介入するときが来たと気づいたからである。彼女は、効果をあげるには、明らかにその別離によるショックがあまりにも強いためにその任に耐えられなくなっているシビルから、肉体の支配権を取り上げなければならないことに気づいたのだった。

2008-09-19

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「私にスマートぶってみせるもんじゃないよ」とハッチーは警告した。「ほんとうのことを言っているだけだわ」とビッキーは言った。「さあ」とハッチーは話題を変えた、「エルダービルから荷物が届いているはずなんだよ。郵便局まで行って取って来ておくれ」ビッキーは出かけた。

2008-09-18

[東北] 多重人格・シビルの記録より

とうとう、ビッキーは自分だけの目で、しかと世界を見、その全体を見、雲一つない、晴れた青空を見た。裏口の階段のところまで来て,ビッキーはそこから家のなかにはいることに決めた。「そこにいるのはペギー?」とハッチーが台所の窓から呼んだ。ちがうわ、とビッキーは心のなかで言った。ペギーでもシビルでもないわ。

2008-09-17

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「じゃあ、、、」思春期特有のとまどいでことばが詰まり、彼はだまりこんだ。すると、身を引き、振り向いて、立ち去った。小さい頃からどんな偶然の肉体的接触もさけてきたシビルが、いまはうれしさのあまりうっとりとした。はじめ彼女は、ダニーがもう自分のそばからいなくなっていることさえ気づかなかった。そして、そのことに気づくと、彼女はおののき、心配そうにダニーをさがした。

2008-09-16

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルがダニーに、彼女の母親が言ったことを報告したとき、彼はしずかに、「きみのお母さんは、きみを傷つけようと思ってそんなことを言ったんだ」と答えた。シビルはダニーがそんなことを言ったことにおどろいた。翌月、ダニー一家がウイロー・コーナーズを出る準備をしているあいだ、2人が時間がどんどんすぎてゆくと考えて前よりも熱心にいっしょになんでもしたという以外に、変わったことはなにもなかった。

2008-09-15

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ほかのだれにも背を向けて、彼女はダニーの方を向いた。ダニーは、ほかのこどもたちに障壁を構えることなしに、彼女が彼に対してするようにちゃんと彼女の方に向いていた。シビルとダニーはまったく自然に、しかるべき年齢に達したら2人は結婚するものと思っていた。シビルは、そうなれば、時間は少しはおかしくなくなるだろうと固く信じていた。

2008-09-14

[東北] 多重人格・シビルの記録より

しかし、ときどきは、シビルもいつも自分にまつわりついている奇妙な時間の問題を忘れることができたーそれは、正面階段の上に腰掛けてダニーと話をしているときとか、彼女がサンルームで遊んでいるときであった。サンルームでは、彼女は人形たちにシェイクスピア劇の登場人物ふうのコスチュームをつくってやり、パテー・アンをポーシャに、ノーマをロザリンドに、名前のない人形を『十二夜』の道化師にへんしんさせたりして遊んだ。

2008-09-13

[東北] 多重人格・シビルの記録より

また、ダニーがいなかったら、いつもコーナーズ・クリア紙に発表されて町中の人の目にふれる学校の優等生名簿から彼女の名前がきえたことで荒れ狂った母親との対立をさけることも不可能だったのちがいない。「おまえはいつだって載っていたんだよ」と母親は悲嘆にくれて言った。「こんなバカな子をもった私はいったいどうしたらいいんだろう。おまえはりこうなんだ。お前はただ私を傷つけようとしてこんなふうにしているんだ。悪い子だ。ほんとに悪い子だよ!」

2008-09-12

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ダニーはシビルが5年に〝進級〟してから経験した寂しさと頼りなさに対する解毒剤となった。どういうわけかわからないが、彼女は友建ちを失っていた。そして、彼女の正統派キリスト教の信仰がいつも彼女をじょかのこどもたちから引き離していたのだったが、たかも今になってはじめてみんながそのことに気づいたかのようだった。いまは、彼女の信仰の禁制のために、彼女にほかのこどもたちのすることがなにもできず、そこで、こどもたちはあの邪悪な仇名〝白いユダヤ人〟を彼女にあてはめていた。

2008-09-11

[東北] 多重人格・シビルの記録より

葬式の花を配っていた少女の漠然とした記憶が刺激となって、シビルはダニーに様子がちがうすべてのことをきいてみる気になった。いろいろな家が建てられていた。いくつかの店は持ち主が変わっていた。町は同じではなかった。シビルは、ダニーにならそのうちのなにか、あるいはすべてについてきけると思った。

2008-09-10

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ダニーがこう言ったとき、シビルは、まるで夢であったかのように、シビルと呼ばれているがシビルではない1人の少女がダニー・マーテインといっしょに彼女のおばあさんの葬式の花を町の病気の人や貧しい人のところに配りに行ったのを思い出した。夢のなかでのように、自分がその少女を見ていたのを思い出した。あたかも自分がこのもう1人のシビルのそばでいて、いっしょに歩いていたかのように思われた。

2008-09-09

[東北] 多重人格・シビルの記録より

冷たい、厳とした大理石像のある学校のメイン・ロビーで、ダニー・マーテインがシビルに声をかけた。シビルより1つ年上のダニーはとても仲のよい友だちだった。2人は、黒いシャッターのある白い家の正面階段に座って何度も長いことを話し合ってきた。彼女はほかのだれよりもダニーにはいろいろ話すことができた。

2008-09-08

[東北] 多重人格・シビルの記録より

昨日は存在しなかった。シビルは墓地にいたとき以外のことはおぼえていなかった。彼女にわからないことは、ほかの人たちが自分が知っていないということを知らないことだった。ミス・ヘンダーソンは相変わらず、自分がそのときちゃんとこの机に座っていたかのように昨日の事について話しつづけた。でも、自分はここにいなかった。昨日はブランクだった。

2008-09-07

[東北] 多重人格・シビルの記録より

これはまったく新しい経験ではなかった。これまでにも何度か、彼女には、ミス・ヘンダーソンが黒板にあの数字を消したときのように、時間が消されてしまったように思われたことがあった。だが、こんどのはもって長いようだった。いままでとくらべてずっと多くのことが起り、シビルにはわからないことがずっと多かった。

2008-09-06

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルは頭を横に振るだけだった。「さあ、シビル」と先生は言った、「いくつになる?」。ほかのこどもたちが声をあげて笑った。キャロラインシュルツがくすくす笑った。「シビル」と先生はなおもつづけた、「その答えはいくつか言ってごらんなさい」「わかりません。わからないんです」シビルの声は消え入りそうだった。

2008-09-05

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女の母親はミス・ヘンダーソンが彼女の先生であることを知っていたが、シビルはまだ自分は3年生だと思っていた。まず3年生のほうに言ってみることにした。ミス・サーストンが彼女の机に座り、試験答案を整理していた。「よく訪ねてきてくれたわね」と彼女はシビルを見ると言った。「前の生徒が戻ってくるのって好きよ」戻る?シビルは5年の教室に向かった。慎重に教室にはいり、よく確かめてその朝自分が気がついたときに座っていた席に戻った。

2008-09-04

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「だれだかよくわかっているじゃないか」と母親は答えた。そんな名前をきいたこともなかったシビルは、そのことをあまり大きく考えるのがおそろしかった。彼女はただ、この謎めいた日に彼女をとりまいているわけのわからない出来事の具体的なシンボル、なに1つみおぼえのない着物のはいっている驚くべき衣装棚のなかをじっと見つめていた。

2008-09-03

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼らは再びもとの古い家に住むようになり、祖父もいっしょに2階の自分の部屋に住むことになった。それでおじいさんが自分たちといっしょに生活するようになった、らしかった。祖父が自分の部屋に行くために席を立った。「元気を出すんじゃ、シビル」と彼は言った、「微笑みを忘れず、げんきでさえいれば人生にこわいものはない」。彼は食卓の角にからだをどしんとぶっつけた。

2008-09-02

[東北] 多重人格・シビルの記録より

そのときシビルは母親をまっすぐ見ると、じぶんでもかなり思いきったことを言った。「お母さん」と彼女はきいた、「私いま何年生?」「私いま何年生?」と彼女の母親はおうむがえしに言った。「なんてバカなことをきくのよ」だれも彼女に教えてくれず、彼女がどんなにそれを知りたくてあせっているかもわかってくれなかった。

2008-09-01

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「カトリックの大統領なんか絶対にでるはずがないわ」とハッチーが言った。「わしの言うことをおぼえておくことじゃ」と祖父が言った。「そのときはきっと来る。油断をしていればローマンカトリックの連中がきっと世界を支配することになる。連中はこの世の終わりが車でわれわれを無限に苦しめるじゃろう!」

2008-08-31

[東北] 多重人格・シビルの記録より

それぞれが別々に食事をとり、相手の領分にはいりこむことはなかった。それがおばあさんのルールだった。だが、おばあさんは死んでしまった。死んだとばかりだというのに、もうそのルールは破られてしまった。父親が食前のお祈りをした。母親が食べものをまわした。フライドポテトが2度まわされた。いくらか残っていた。父親が皿を受け取って祖父に言った、「お父さん、ポテトがもう少しありますよ」

2008-08-30

[東北] 多重人格・シビルの記録より

父親が雑誌から目を離した。「シビル」と彼は初めて彼女に気がつくと言った、「遅かったね」「お父さん」と彼女はつい洩らした。「あのとても大きい人形はどうしたの?」「ふざけているのかい?」と彼は答えた。「あれはナンシー・ジーンさ。おまえがコンテストでもらったんだよ。あれをもらったときあんなによろこんでいたじゃないか」シビルはなにも言わなかった。

2008-08-29

[東北] 多重人格・シビルの記録より

母親台所から声をかけた、「おまえかい、ペギー?ずいぶんおそかったわね」また、冷のニックネームだわ。彼女の母親は、シビルという名前が気に入らず、彼女にペギー・ルイジアナという名前をつけていた。シビルがおりこうだったりおかしかったりすると、そういうシビルが好きな彼女の母親は、いつも彼女をペギー・ルイジアナとか、ペギー・ルーとかペギー・アンとか、あるいはただペギーとか呼んだ。どうやら、お母さんは、今日は自分に行為をもっているようだ。

2008-08-28

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女は、ちょっとその首のの周りを抱いてやってから、家のなかに駆け込んだ。彼女は、学校での午前中の混乱が家では消えてなくなることを願って、家のなかは元どおりであってほしいと思った。しかし、せまい玄関の通路の入り口のところで、彼女の正常であるようにという希望は裏切られた。

2008-08-27

[東北] 多重人格・シビルの記録より

それに答えないで、シビルはその見たこともないコートを見つめつづけ、ミス・ヘンダーソンが自分の名前を知っているのはおどろくには当たらないと心でおもっていた。ウイロー・コーナーズのようなちっぽけな町では、みんなが、知りあいだった。ミス・ヘンダーソンはくり返した、「昼を食べに家に帰るんでしょう?」。

2008-08-26

[東北] 多重人格・シビルの記録より

あらゆることが、あまりにも早いスピードで頭のなかを走り抜けたために、彼女はなに一つ理解することができなかったし、わかりきったこと、つまり家に買えることもできないでいた。赤尾を上げてみると、部屋にはだれもいなくなっていた。ほかのこどもたちがまちがいなく言ってしまったことを確かめると、彼女はゆっくりと席を立ち、さらにゆっくりとコート・ホールのほうに歩いた。

2008-08-25

[東北] 多重人格・シビルの記録より

だれも、なにか変わったことが起っているとは思っていないようだった。三年のこどもたちは、彼女が彼らといっしょに勉強したこともない質問に答えていた。彼女にはそのどれもが理解できなかったのに。彼女は先生の机の上部にある時計を見た。12時2分前だった。間もなくベルがなって解放されるだろう。待ちながら、彼女は急にパニックに襲われた。その時ベルが鳴り響き、先生が調子の高い声で威勢よく「授業はこれでおしまい」と言ったのが耳に入った。

2008-08-24

[東北] 多重人格・シビルの記録より

たくさんノートがあったが、彼女はそんなノートを取ったおぼえがなかった。ちゃんとしてあった宿題もあり、それも自分はしたおぼえがなかったのに、その宿題はどれも優の成績であることに気づいた。こうしたことすべてが意味することをたいしたことではないのだと思うとあせればあせるほど、彼女はますます不安になるのだった。

2008-08-23

[東北] 多重人格・シビルの記録より

これらのこどもたちは彼女とは幼稚園のときからずっといっしょで、みんなよく知っていた。彼らはその同じこどもたちだったが、どうやら前に見たことのある彼らと同じではなかった。彼らは、三年のときに着ていたのとはちがう洋服を着ていた。彼女がおばあさんんお葬式のために出てくる前とくらべるとずっと大きく見えた。いったいこんなことがありうるのだろうか?このこどもたち全員が一瞬のあいだに大きくなるなどということがありうるのだろうか?

2008-08-22

[東北] 多重人格・シビルの記録より

いったいそうしたんだろう?シビルにはわけがわからなかった。それは夢ではなかった。彼女が幼稚園児代から通っているその学校の普通教室であるその部屋にはどこもおかしいところはなかった。ただ、それは彼女の教室でないだけだった。その部屋の窓は、三年のきょうしつでは西向きだったのに、東向きだった。彼女は学校の教室は全部知っていたので、これは五年の教室だということがわかった。

2008-08-21

[東北] 多重人格・シビルの記録より

風がひゅうひゅうと音をたてた。空がくらくなった。なにも見えなかった、抵抗できないちからで、その手はまだ彼女を引っぱっていた。その圧力が彼女のの肉体に深くくいこんだ。腕が、その激しい、摩擦的動きによって生じた痛みでうずいた。シビルは、これほど強引に自分をおばあさんから引き離したのはだれか知ろうとして振り返った。叔父のロジャーだろうか、父親だろうか?二人ともそこにはいなかった。

2008-08-20

[東北] 多重人格・シビルの記録より

陽光のなかの金属製柩のかすかなきらめきが、しばらくその日の灰色にとってかわった。柩はおそるべきことをするためにやってきた男たちの手で抱えられていた。彼らは柩をもち上げて、それを降ろしはじめていた。少しずつ、ゆっくりと、彼らはおばあさんを土のなかへ深く埋めようとしていた。

2008-08-19

[東北] 多重人格・シビルの記録より

眠り。おばあさんは眠っていた。二人で一緒に川に行くことはもうないだろう。そこには、はなだけがあるのだーおばあさんもシビルもいないで、ただ花だけが。「、、、地は地へ、灰は灰へ、ちりはちりへ、願わくはわが主イエス・キリストによりて彼女に復活の喜びを与えられんことを」

2008-08-18

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルは、いつもあばあさんに自分の絵を見せることにしていたが、おばあさんは必ず「上手だこと」と言い、それを壁に掛けてくれた。あばぁあさんは窓のそばに大きな箱をもっていて、そのなかには、シビルのためにとっておいてくれたいろいろなこどもの本が、たくさんの雑誌や書類といっしょに入れてあった。

2008-08-17

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルは金属製の柩も、花束も、ほかの人々をも見ていなかった。彼女が見ていたのは、ウイロー・コーナーズ生まれの男と結婚して、夫の町に住んでいたカナダ生まれの祖母メアリであった。夫の教会ではほかの人たちにとってアウトサイダーであったメアリは強制的に夫の言うとおりにさせられていた。彼女は読書が好きだったが、夫はこう命令してそれをやめさせた、「真実以外はみな偽りなのだ」。聖書だけが真実である、と彼は考えていた。

2008-08-16

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女の祖母は、彼女に、何時の日かイエス様がやって来て髪を愛した人たちを墓穴から生き返らせてくれるのだと話してくれたことがあった。そのときは、自分とシビルが生まれかわったこの世で永久にいっしょにいられるだろう、とおばあちゃんは言った。叔父のロジャーと叔母のハッチーがシビルを家族が立っているところに連れて行った。

2008-08-15

[東北] 多重人格・シビルの記録より

コートを着て、たむをかぶり、格子じまのスカーフを着けた。階段を降り、黙って動かないでいる人たちのそばを通って歩道に出た。「こっちの車に乗るんだよ、シビル」と牧師が言った。車のなかには彼女の叔父とその妻、彼女のきらいなもう一人のハッチーがいた。叔父と父親はそっくりだったので、牧師は彼女を〝ちがう〟パパの車に乗せたのだった。彼女はがっかりした。

2008-08-14

[東北] 多重人格・シビルの記録より

もうすぐ1時になろうとしていて、しみのついたリノリュームを敷いた白い台所の窓から、シビルは、男たちが死期に使うために葬儀屋からもって来たおりたたみ椅子を運んでいるのを見る事が出来た。「自分の部屋へ行ってなさい」と彼女の母親がシビルに言った。「用意ができたらお葬式に出られるようにママが連れて行ってあげるから」

2008-08-13

[東北] 多重人格・シビルの記録より

しかし、おじいちゃんが家に帰って来たときは、その訪問を打ち切るのはシビル自身だった。彼女は、大きくてがっしりした、どちらかといえば粗野な人間である自分の祖父が好きになれなかった。彼が帰って来たことを知らせる彼のぎこちない足音がすると、彼女は祖母にこう言うのだった、「もう行かなくちゃ」。お返しに、おばあちゃんはいつもわかっているよというように笑顔を見せるのだった.

2008-08-12

[東北] 多重人格・シビルの記録より

とてもだいじにしまってあったその写真を見たとき、彼女は、おばあちゃんが自分を本当にすきなんだと改めて気づいた。もとはっきりそのことを証拠だてたのは、ハッチーがシビルを悪い子だと言って責めているときに、おばあちゃんが弁護をしにきてくれるときだった。「なんです、ハッチー」と彼女の祖母は言ってくれたものだった、「この子はまだこどもなんだよ」。

2008-08-11

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルの障害のなかに彼女の祖母が占める位置は枢要だった。結局、幼年時代のシビルの面倒うをみたのはその祖母で、彼女の母親ではなかったのである。それに、彼女の母親が移り気で両価傾向的であったのに対して、彼女の祖母は安定していて堅実だったこともあった。また、おばあちゃんの家という聖域にはたくさんの館ーウイルバー博士の診療室における回想で大きく浮かび上がったいろいろなちいさな経験の思い出ーがあった。

2008-08-10

[東北] 多重人格・シビルの記録より

欠けているものがなにかを知ろうとあせればあせるほど、ますます捉えどころがなくなってしまうのだった。彼女にわかっていることといえば、なにかよくわからない欠落がじぶんを、彼女の母親がよく言ったように〝わびしい、沈んだ、そして憂鬱な〟気持ちにさせるのだ、ということだけだった。

2008-08-09

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女は他人の家でもこれと同じように振る舞うようになった。彼女は縫い方を知ってはいたが、手がふらふらして針に糸を通すことができないほどだった。ウイラードがシビルの幼児服を全部縫った。ハッチーはカーテンやちりをもてあそびながら休みなく、狂信的にことばをもてあそんだ。

2008-08-08

[東北] [北海道] 多重人格・シビルの記録より

ハッチーは黙従したが、自分が黙従したことを悔やんだ。シビルのほうは、父が与えられないで、泣いた。今度は、ハッチーが、なくといって赤ん坊を非難した。鳴き声はハッチーをいらいらさせた。そして、乳があたえられないために赤ん坊がどんなひどい影響をうけるかという心配以上に、ましてウイラードに無理強いされた事に対する恨み以上に、鳴き声がしょうじさせたそのいらいらが、彼女につぎのように叫ばせた、
「もうこれ以上我慢できないわ!」。

2008-08-07

[東北] 多重人格・シビルの記録より

実は、〝こわした〟のはハッチー自身だった。出産後、彼女はひどいスランプにおちいり、それがシビルの人生の最初の4ヶ月間続いた。この期間におけるハッチーの赤ん坊との唯一の接触は、父を飲ませることだった。それ以外は、その子の面倒うを見るのは看護婦、ウイラード、そしておもにドーセットおばあちゃんの役目であった。

2008-08-06

[東北] 多重人格・シビルの記録より

のちにウイルバー博士は、矛盾した感情の強襲がハッチーのホルモン系統を混乱させて流産の心身医学的要素となったものと推定した。すずれにしても、シビルを妊娠したとき、ウイラードはこの胎児もまた生命を全うしないのではないかと思った。だから彼は、前には見せたことがなかった支配権を発動して、彼女に妊娠中は人前に出ることを禁止した。かくて、シビルはすでに子宮のなかにいるときから秘密と隠匿に取り囲まれることになった。

2008-08-05

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女は、とくに家事が楽しいというわけではなかったが、熱心で狂信的な主婦となった。また結婚したてのころは、ハッチートウイラードは長時間、楽しい音楽の夕べを催した。彼女はまさしく彼が想像したとおりの伴奏者だった。ドーセット夫妻の結婚生活の最初の13年間にハッチーは4階流産し、こどもがなかった。

2008-08-04

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼との見合いは、彼女の婚約者の宝石商がアルコールを断つと言う約束を破ったことに対する意図された挑戦行為であった。そのうえ、ハッチーは、男はみんな同じで、信頼できず(ペギー・ルーがウイルバー博士の診療室で口うつしに述べた考え)、「ただ一つのことしか頭にない」のだと主張した。

2008-08-03

[東北] [北海道] 多重人格・シビルの記録より

しかし、ハッチーのみめかたちのよさ、機知、快活さに魅せられた男たちが、彼女の辛辣な口のききかたや独特の奇行のために彼女から離れて行ったのに対して、ウイラードはそうしなかった。彼は、彼の表現によると「彼女に耐えて行こう」と思った。彼女のことを頭がよく、「洗練されて」いて、さいのうあるピアニストだとかんがえていたからである。

2008-08-02

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女の母アイリーンはペンシルバニアに移住するために生まれ故郷のサウザンプトンからやって来たイギリス生まれの両親の娘だった。ウイラードの父オーブリー・ドーセットはコーン・ウオールからペンシルバニアに来たイギリス人の孫で、ウイラードのカナダ生まれの母メアリー・ドーセットは、カナダに移住する前に宗教的迫害を逃れてオランダに渡ったイギリス人家族の子孫だった。
彼女の母アイリーンはペンシルバニアに移住するために生まれ故郷のサウザンプトンからやって来たイギリス生まれの両親の娘だった。ウイラードの父オーブリー・ドーセットはコーン・ウオールからペンシルバニアに来たイギリス人の孫で、ウイラードのカナダ生まれの母メアリー・ドーセットは、カナダに移住する前に宗教的迫害を逃れてオランダに渡ったイギリス人家族の子孫だった。

2008-08-01

[東北] 多重人格・シビルの記録より

6年間、ドーセット家で住み込みの女中をしていたジェシー・フラッドは、「あの方たちは世界一すばらしい人たちでした。ドーセット夫人は私や私の家族にとても親切でした。奥さんは私たちになんでもーあらゆる種類のものをーくださいました。ドーセット家の人たちほど親切な人はほかにいませんわ」としか言わなかった.

2008-07-31

[東北] アメリカ便り

ロサンゼルス一帯で、マグニチュード(M)5.4の中規模の地震が起きたそうだ。重傷者や建物の倒壊といった深刻な被害はなかったそうだが、現地では30回以上の余震が観測されており、南カリフォルニアの住民にとっては、今後予想される大地震の警告だと言われているそうだ。

2008-07-30

[東北] 多重人格・シビルの記録より

だが、だれも別にこういったことを気にとめるわけではなかった。しかし、これらすべては、外見上はいかにも平凡、いかにも正常、いかにもピューリタン的なこの町に、地下の流れのようにゆきわたっていて、結局はいろいろな種類の私生児を生むことになるまれにみる醜悪さと淫乱の一部であった。

2008-07-29

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ウイロー・コーナーズの高潔な市民たちにとって、明日の花が今日の偏狭な葉によってしおれつつあるなどといったことは、まったく思いもよらないことだった。せでに分析に、黒いシャッターのある白い家として出てきたドーセット家は、バイン・ストリートに面して学校と対角線場に位置していた。

2008-07-28

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ウイロー・コーナーズには、しゃかいがくしゃならばだれでも予言できるとおり、沢山の宗派の教会があった。正統派キリスト教集団には、町に最初に教会を建てた浸礼派をはじめ、安息日再臨派、正ヨハネ洗礼派、会議派がふくまれていた。メジスト派、組合教会主義派、ルーテル派はみなお互いにあざけり合い、またローマン・カトリックを悪魔のけしんとみなしてあざけっていた。

2008-07-27

[東北] 多重人格・シビルの記録より

町には2人の警官がいて、1人は昼、1人はよる勤務していた。1人の弁護士、1人の歯科医、1人の医師がいた。1代の救急車がいつでも病人を、80マイル離れたミネソタ州ロチェスターにある、すでに世界的に名をしられたメイヨー・クリニックにはこべるように待機していた。

2008-07-26

[東北] 多重人格・シビルの記録より

外見的には、ウイロー・コーナーズにはなにもこれといって変わったところはなかった。1869年に建設されたその町はちいさいまちというよりちっぽけな町で、2平方マイルの地域に生活している1000人の町民の単調なニューズは町の週刊新聞コーナーズ・クリアに載せられ、その典型的な見出しといえばつぎのようなものであった。

2008-07-25

[東北] 多重人格・シビルの記録より

そういうわけで、だんだんと、ウイルバー博士はシビルをーそしてビッキーをもー1923年1月20日に生まれたシビルがその人生の最初の18年間をすごした、ウイスコンシン州のウイロー・コーナーズの綿密な調査に誘いこんでいった。

2008-07-24

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「このドクター・ウイルバーは私たちのことをきにかけている」そのあと、マーシャー・リン、バネッサ・ゲイル、メアリとそのほかのみんなは秘密会議を開き、こう決議した。「彼女に会いに行こう」と。

2008-07-23

[東北] 多重人格・シビルの記録より

車のなかにはほかにも、ドクターもシビルもまだ会ったことのない乗客達がいた。生意気で我の強い、盾型の顔、グレーの目、茶色の髪のマーシャ・リン・ドーセットが遠足の一部始終を見ていた。

2008-07-22

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「しなければならないことがありますの」とシビルは釈明した。本当の理由は、後でドクターにわかったことだが、シビルは、自分が3時か4時以後に外にいると、1日の終わりにしばしば現れる感情障害、披露、恐怖などの徴候を店はしないかとおそれていたからであった。

2008-07-21

[東北] 多重人格・シビルの記録より

父親のことは、分析ではほとんどふれられたことがなかったので、ウイルバー博士は彼女が父親のことを話すのをきいてうれしく思った。会話は、ハナミズキ、ライラック、花の咲いている野生リンゴなどの美しい植物のことに移った。シビルは車を止めるようにたのんで、花の咲いている野生リンゴやハナミズキが点在しているオカを鉛筆でスケッチした。

2008-07-20

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「いつも船の絵を描きたいと思っていたんですの」とはじめて入り江で船を見つけたときシビルが言った。「でも、いつもその形がうまく描けていなかったみたいですわ」「絵がいてみたら」とドクターは車を止めて言った。駐車した車に座ったっま、シビルはそのマリーナに碇泊していたヨットを何枚かスケッチした。

2008-07-19

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルのふはといえば、彼女がテデイに手を振ってさよならをし、ドクターのコンバータブルに乗りこんだときは、まさしくシビルそのもののようであった。ネイビー・ブルーのスーツと赤い帽子に身を包んだ彼女は魅力的に見えたし、ドクターがこれまで見たよりもずっと人なつっこかった。

2008-07-18

[東北] 多重人格・シビルの記録より

1955年5月初旬のある晴れた日、朝の7時に、ウイルバー博士がホイッチャー・ホールに車で着くと、シビルはテデイ・リーブズと一緒に待っていた。日ごろからシビルに特別の関心を示していた手では、シビルが複数の自我のことを彼女に打ち明けてからというもの、なおいっそう強い関心をもつようになっていた。

2008-07-17

[東北] 多重人格・シビルの記録より

いまいましい!とドクターは思った。シビルが遠慮がちに、「あら、先生には日曜日に私とすごすよりも、もっとたいせつなことがおありですわ」と答えたからである。私が彼女をとても才能のある女性だと思っていること、そしてもし彼女が私のかんじゃでなかったとしても彼女といっしょにいると楽しいとおもっていることをわからせなければならない。

2008-07-16

[東北] 多重人格・シビルの記録より

無意識的な防衛、ドクターはタクシーの運転手に料金を支払いながら考えた。いま私がしなければならないことは、人格がいくつあろうとかまわない、その一人一人と親しくなること、そして彼らがかかw里をもっている葛藤がなんであるかを見定めることだ。そうすることが、分離を必要ならしめたショックの原因を知ることにつながるのだ。この方法なら、彼女がそれに対して防衛の役割を演じている事実ーどうやら耐えられない真実らしいーに到着できる。

2008-07-15

[東北] 多重人格・シビルの記録より

それも効果がなかった。事実、慰められるどころか、シビルが、「だれ一人として、そんなことをした人のことをきいたことがありませんわ」と反論したとき、ドクターハ、ずいぶん遅らせたつもりだったが、シビルに別の自我のことを強引に知らせたのはあまりにも軽率なやり方だったのではなかったかと疑いはじめたほどであった。「セコナルをあげましょう」とどくたーが前の晩くれたセコナルによって、不安から解放されて芽をさました。複数の自我は消えてしまった悪夢のように思われた。

2008-07-14

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女は鍵をいじくりまわしがが、ふらふらしたその手では鍵を鍵穴に押し込むことができなかった。一人で部屋に入る自信を失って、彼女はテデイ・リーブズの部屋のドアを弱々しく叩いた。テデイはシビルをベッドに寝かせた。そして、シビルがベッドから出たりまたはいったりするのを、またつぎつぎとぜんぜん別の気分と思われる状態にはいったり、また出たりするのを、そばに立ちながら恐怖と同情で見守った。

2008-07-13

[東北] 多重人格・シビルの記録より

しかし、ドクターが彼女のに、「あなたが自分の意識をうしなっているあいだは、他の人があなたにかわっているの」と話したときに、彼女のからだを走り抜けたおののきは恐怖ではなかった。それは是認だった。あおの宣言は、よきにつけ悪しきにつけ、人々が彼女がしたいといっているが彼女はしてはいなかったことども、自分は彼女を知っていると言明した道の人々の真相を説明した。

2008-07-12

[東北] 多重人格・シビルの記録より

1日が終わったとき、彼女はしばらく精神病や精神神経症のことを考えないですむ時間、他人の人生w0尾生きることをやめる時間がほしかった。夫のため、職業上の会合ののため、親戚や友人を訪問するため、呼んだり考えたりするため、髪の手入れをしたり買い物をしたりするための時間がもとほしかった。こうしただれもがしていることを、患者の突然で緊急の要求のために放棄しなければならなくなることが、あまりにも多かった。

2008-07-11

[東北] 多重人格・シビルの記録より

多重人格は、精神神経症としt知られる患者の分類に属している、ということがドクターには明らかになっていた。その特異な神経症はグランド・ヒステリーでもある。シビル・ドーセットがっかっている、多重人格のみならずいろいろな心身症や五感障害をともなうこの種のグランド・ヒステリーは、めったにみられないほどの重症であった。

2008-07-10

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルはインタビューが終わるまでシビルのままだった。とうとう彼女は別の人格のことを知ったわけで、多重人格の来歴について最初の分析が本式にはじまろうとしているのだ。彼女は再び机の上に市ラバっている多重人格に関する本に向かい、さらに書棚からフロイトやシャルコーの本を取り出し読み馴れたヒステリーに関する論文に目を通した。

2008-07-09

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「いろいろな人格?」シビルが不安そうにきき返した。「いろいろな人格とおっしゃいましたわね?1つじゃないんですの?」「シビル」とドクターハやさしく言った。「こわがることはなにもないのよ。1人はペギー・ルーと名乗る人格なの。彼女は我が強いの。ペギー・アンというジンックもあって、彼女も闘士だけどペギー・ルーよりずっと如才がないわ。もう1人はビッキーと名乗っているの。彼女は自信があって、人なつっこく、愛想がよく、とても明るい人物よ」

2008-07-08

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「もう行ってよろしいですか?私たちの時間はもう終わりかけていますわ」とシビルが自分に加えられた圧迫にほとんど耐えられなくなったように突然言った。しかし、ウイルバー博士は容赦なく圧迫しつづけた。彼女は、こうなったら行くところまで行ってみようと思った。「あなたは賢い人だからフィクションと現実をこんどうしたりしないはずよ」と彼女は言った。

2008-07-07

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「この症状は」とドクターは説明をつづけた、「私たちが前に話し合った遁走の状態よりも複雑だw。単純な遁走のばあいはただ意識がなくなるだけだけど、あなたの遁走はブランクではないの」「私は、いつもそれをw足しのブランクの時間と呼んでいました」とシビルが言った。

2008-07-06

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「ええ、言いました」シビルはうつむいて言った。「いままでずっと、自分ではしたおぼえのないいろいろなことを、私がしたと他人から言われてきました。言われるままにしておきましたわ。ほかになにができまして?」「あなたが話したのはどんな人たち?」「ほとんどいつでも、だれでもですわ」「どんな人?」

2008-07-05

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「さあ教えて、あなたはまだ私になにもおっしゃらなかったけど、あなたは自分が知らないあいだに時間がたってしまうのに気づいているはずなんだけど」とシビルは口を閉じたままだった。「そうじゃないこと?」シビルが答えなかったので、ドクターハつづけて言った、「あなたがここで時間を失ったことはわかるわね?」

2008-07-04

[東北] 多重人格・シビルの記録より

晴れ晴れとしたその目は、つぎつぎと口にされた恐怖のために、大きく見開かれていた。ドーセット家の一員でなかったビッキーが、その肉体をドーセット家の一員であったシビルに返したのだ。自分が寝椅子の上でドクターのすふそばに座っているのに気づいておどろいたシビルは、不意にその場を離れた。「どうしたのかしら」と彼女は言った。

2008-07-03

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「みんなって、だれ?」とドクターハ期待してきいた。「さあ、いわない方がよさそうですわ」とビッキーは用心深い笑いを浮かべて答えた。「なんといっても、私は家族の一員ではなかったんですもの。私はただいっしょに住んでいただけですから」

2008-07-02

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ドクターは、いみじくもビッキーが、その前の夜自分が考えていた症状をそのまま、それに愛をつけ加えて話していることに気づいて、この自分の共同分析者が原因にふれてくることを願った。「ビッキー」と彼女は話を遠回しにその方向に向けようという考えを抱いてきいた、「あなたも同じように不安になるの?」

2008-07-01

[東北] 多重人格・シビルの記録より

これは最初のショックと結びつけることができるものだろうか?とドクターハ考えた。どうやらそれは保護の欠如を意味しているらしい.彼女が、なぜ美しいものが人を傷つけたりするのだろうかときいたとき、ビッキーは謎めかして答えた。「それは愛のようなものですわ」

2008-06-30

[東北] 多重人格・シビルの記録より

その朝、ウイルバー博士h、いまはいつもそうであったように、現れるのは〝だれ〟だろうかと考えながら、ドーセットのアポイントメントの時間を迎えた。現れたのはビッキーだった。幸先よいスタートだった。というのはビッキーはこのケースについてなんでも知っていると主張していたからである。

2008-06-29

[東北] 多重人格・シビルの記録より

これまでの分析はいくつかの抜きがたい恐れ−人に接することや音楽や手のーを明らかにしており、それらはあるショックに関連しているように思われた。また、シビルのばあいには’抑圧されるけれどもペギー・ルーのばあいには奔放に噴出する激しい怒りや、ペギー・ルー、ビッキー両者における母親拒否もそれを証明していた。わなにかけられているいう感じは明らかにショックを示唆していた。

2008-06-28

[東北] 多重人格・シビルの記録より

彼女は無党派であることを自認しており、だからこそ自分はこの異常なケースの治療にさいして有利な立場に立てるのだと思った。彼女は、病気の原因を明らかにするためだけでなく、それを治療するためにも、全部の自我の自発的な反応を利用しなければならないだろうと考えた。

2008-06-27

[東北] 多重人格・シビルの記録より

しかし、どうやら複数の原因ないしショックがあって、それらのショックに対する反応が人格化されて複数の自我が生まれたらしいという仮説がドクターの頭に浮かんだ。そうすれば、多くの別の自我は、この症状の合併した状態を芽生えさせた複数の幼児期のショック、複数の原因によるものだと説明できるにちがいない。

2008-06-26

[東北] 多重人格・シビルの記録より

よろしい、もしそうだとすれば、ドクターハ考えた、シビルのケースにはかならず複数の原因んがあるという仮説が