2008-10-31

[東北] 多重人格・シビルの記録

さらば、立ち上がり、事をなさん 悲運にくじけぬ心もて あくまで完遂をめざし、あくまで追求し 努力すること、のぞみを抱くことを学べ! メアリの声はかずれ、彼女はこう付け足した、「おお、あわれな、、、あわれな、、、」「あわれな、なに?」とドクターがきいた。「人生」とメアリは即座に答えた。「兵士たちのいるこの露営地はきらいです。わたしたちみんなが英雄になれるわけではありませんもの」

2008-10-30

[東北] 多重人格・シビルの記録

「メアリ」とドクターハその訪問が終わろうとするときにきいた、「気を悪くしないでもらいんだけど、あなたはここを出てどこへ行くつもりか教えていただける?」「家ですわ」とメアリは言った。「私の住んでいる家ですわ。家に帰ったらお父さんに電話をするつもりですの。シビルは、デトロイトに住んでいるお父さんと奥さんのフリーダのことを話しませんでした?私はお父さんに色々と安心させてあげたいのです。

2008-10-29

[東北] 多重人格・シビルの記録

「おばあさんのかわりをしてくれる人は一人もいませんわ。シビルはおばあさんのことを悲しまなかったのです。シビルは行ってしまいましたから。ペギー・ルーは、一人でいるときしずかに悲しみました。ビッキーは別ですが、私たちはみんなおばあさんのことを悲しみました。でも一番悲しんだのは私ですわ。おばあさんが死んだあとで、それを悲しむために私は出て来たんですの」

2008-10-28

[東北] 多重人格・シビルの記録

メアリは話すのをやめ、頭を下げて、かすかな、疲れた笑いを浮かべながらつけくわえた、「それに、私はビッキーほど魅力的でも、バネッサほど魅力的でもありませんし、彼女たちにはとても太刀打ちできませんわ。わたしはごらんのとおりのおんなですもの」その時はわからなかったが、ウイルバー博士はのちになって、メアリが自分を丸まると太った、母性的な、中年婦人タイプで、あまりスマートではないと考えていることを知った。

2008-10-27

[東北] 多重人格・シビルの記録

「だって、メアリ」とドクターは非常にゆっくりと、そしてはっきりと言った、「あなたは、シビルやビッキーやペギー・ルーがもう9ヶ月ちかくものあいだここにやって来ていることを知っているはずよ。彼女たちがここでなにか罪深いことを言ったりしたりしていると思う?」「わかりませんわ」とメアリは慎重に答えた。「本当にわかりませんわ」「では、なぜ来たの?」

2008-10-26

[東北] 多重人格・シビルの記録

「他にどんなことをするの?」「モーニングサイドの小さな部屋で何かをするのは骨が折れますわ。もう少し広ければいいんですけれど。私は花壇や何匹かの動物のための部屋がほしいんです。いまはカブリしかいないんですから」「ニューヨークはきらい?」「大きらいですわ。でも、まだあまりよく知らないんですの。ときどき博物館や図書館に行く程度ですの。めったにアパートから出ませんのよ」

2008-10-19

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「どんなことをしなければならないの?」とドクターがたずねた。「シビルについて行くことです」「シビルについて行ってなにをするの?」「彼女の行くところに行くんですわ」「ほかにどんなことをするの?」「シビルを手伝います」「どういうふうに手伝うの?」「実際的な方法や微妙なやり方でです」「たとえば?」「そうですわね、ドクター・ウイルバー、ただいまのところ、それは実際的な問題ですわ。

2008-10-18

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ビッキーは即座に答えた。「それなら、家族治療ですわ。先生がそうおっしゃるなら。ご訂正を感謝します」そういうと、まるで確かに肉体が部屋を出て行ったかのように、ビッキーは立ち去った。明らかにビッキーのでない声がていねいに挨拶した、「お会い出来てうれしいですわ、ドクター・ウイルバー」「あなたはメアリ?」とドクターがきいた。

2008-10-17

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「シビルやペギー・ルーやペギー・アンやメアリやほかの人たちのあいだの関係をはっきりさせていなんだから。いったい、、、、?」「質問、質問、質問」とビッキーが遮った。「私も一つ質問させていただきますわ。なぜ、先生はそんなに質問をしなければなりませんの?」

2008-10-16

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「思いませんわ、ウイルバ—先生」とビッキーは頭を振りながら思慮深く言った。「そうは思いませんわ。先生は先生でしかありません。先生はドクター・ウイルバーで、ほかのだれでもありません」「そうかしら?」とドクターはたずねた。「そして、私はビッキーでしかありません。ここにはほかにだれもおりませんわ。ごらんなさい」ビッキーは寝椅子から立ち上がり、部屋を歩きまわりながらきいた、「ようやく、私の言うことがおわかりになりまして?」

2008-10-15

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ビッキーはハンドバッグを開け、口紅をつけ、ハンドバッグを閉じ、それを腕にかかえることで、その問題を終わりにした。「お お」と彼女は立ち上がりながら言った。「あの完全に独立した人たちを同一人物だなどと考えるなんてなんという愚かでしょう。マリアン・ラドローと私のほうが、先生のあげた二人か三人の人たちよりよほど似ていますわ」

2008-10-14

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「結構よ、ビッキー」とドクターはつづけた、「あなたはいま、あなたの家族のshん俗関係をみとめたわけん。でも、シビルや二人のペギーやメアリやそのほかの人たちが属している家族についてはなにも言っていないわ。みんながどういう関係なのかは話してくれていないわ」

2008-10-13

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「あなたは他の何人かは同じお母さんをもっていると話してくれたわ。ということは、その人たちは一人のお母さんを共有しているということかしら?」「ええ、そう言ってもいいかもしれませんわ」「同じからだを共有していることにもなるのかしら?」「そんなバカなこと」とビッキーはきっぱりと答えた。「みんなにんげんですのよ。みんなのことを話してあげましょうか」

2008-10-12

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ビッキーとシビル、メアリとシビル、ペギー・ルーとシビルーその関連はいったいなにか?ウイルバー博士は、だれのことでもなんでも知っているビッキーにきいてみることにた。その日は1955年尾6月15日で、分析がはじまってあら9ヶ月たっていた。ドクターと患者は寝椅子に腰を下ろしていた。「ビッキー」とドクターが言った、「あることを知りたいんだけど。あなたはシビルと関係があるの?」

2008-10-11

[東北] 多重人格・シビルの記録より

こどもたちはしょっちゅう親に5銭と白銅貨や10せんと銀貨をねだったが、シビルはなにもほしがらなかった。ハッチーがきいた、「今夜は何にする?ポプコーン?それともアイスキャンデイ?」シビルは答えた、「そうね、どっちでもいいわ」この言い方は、特徴的ではあるが、シビルに好き嫌いがないことを示すものではなかった。ちょうど、彼女が思い切って時間についての自分の秘密をだれにも話せなかったように、だれにもどんなものも思い切って要求する事をしなかったのである。

2008-10-10

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ある日、シビルは学校から帰るといそいで家に駆けこみ、彼女の母親に心臓の働きについて話そうとした。気候ともしないでハッチーは言った、「そんなことききたくないよ」。しかし、シビルはそのことにすっかり夢中になっていたので、なおも習ってきたことを説明しつづけた。

2008-10-09

[東北] 多重人格・シビルの記録より

シビルは、彼女の父親の安易な楽観主義にもかかわらず、自分は〝精神の病〟にかかっているのだと思いこんでいた。それは、ドーセット家やウイロー・コーナーズの町では不名誉なことと考えられている病気だった。事実、彼女の叔父ロジャーが購買係として、また彼女の叔母のハッチーが看護婦として働いていた州立病院をめぐって新たな恐怖がまき起った。シビルはしばしばその病院に叔父と叔母を訪ねていたのである。

2008-10-08

[東北] 多重人格・シビルの記録より

なによりも一番苦しかったことは、生活が非現実的なかっこうで漂い、妙な胸騒ぎで満たされることだった。シビルはよく、自分が夢でも見ているようにどこかにいたりなにかしたりしていたのを思い出した。自分自身のそばを自分で歩いたり、自分が自分を見ているような感じがした。そして、夢と、こうした夢のような非現実とのちがいがはっきりしないことが何度もあった。

2008-10-07

[東北] 多重人格・シビルの記録より

ヒステリーは、随意筋や特殊感覚器官に生ずる劇的な肉体的症状によって古くから明らかにされているのもである。転換がおこなわれているあいだ、無意識の衝動が肉体的症状に転移されるのである。意識されることなしに、情動上の加藤がこうして肉体的に表現されるのである。

2008-10-06

[東北] 多重人格・シビルの記録より

春は彼女の祖母のことがあっていやだった。夏が近づきつつあったが、夏はダニーのことがあっていやだった。正面階段に腰かけたり、ブランコにのったりして、シビルはよく、ダニーの出発につながる夏のことを思い出したものだった。

2008-10-05

[東北] 多重人格・シビルの記録より

詩に興味を抱いていたメアリは、大げさな表現で、シビルにとっては偉大なる世界精神がときどき活動を停止し、そういうときはシビルにとっては生き生きとした森も、青々とした牧草地帯もなく、忘れ去られた不毛の荒地しかないのだ、とビッキーに訴えた。「シビルはそれを無と呼んでいるの。そんなの、私たちにとってはあまりうれしくないわ!」

2008-10-04

[東北] 多重人格・シビルの記録より

メアリはいぜんとして6年生のあいだときどき現れたが、ほとんどの時間そこにいたのはビッキーだった。6年が終わるころのある日、学校へ行く途中、シビルがやって来た。彼女は、自分を、幻想のなかのビクトリアがそこへつれて来たように感じた。しかし、今度の復帰には、5年への復帰ほどのおどろきはなかった。シビルはやはり、時間を〝おかしい〟と考えたが、こんどは前とくらべるといくらか気が楽だった。

2008-10-03

[東北] 多重人格・シビルの記録より

「病気だよ」ハッチーはメアリのために肌につける布切れを用意しながら言った、「女だけが経験するんだよ。おとうさんにはだまっているんだよ」。そして、ハッチーはこうつぶやきながら大股で寝室を出て行った、「女の災難だよ。災難。男も経験するといいんだ。それが当然というもんだ。男にとってね!」

2008-10-02

[東北] 多重人格・シビルの記録より

新しいバスルームでメアリは、自分の下着に〝あの褐色がかった赤いもの〟とのちに彼女が述べた者を見つけて真っ青になった。彼女は、子宮癌を患って出血した彼女の祖父を思い出して、自分も死ぬことになるだろうかと不安になった。「いつまでそこにいるの?」とはっちーが呼んだ。「いま出るわ、マム」とメアリは答えた。

2008-10-01

[東北] 多重人格・シビルの記録より

自分の両親とドーセット家を比較して、彼女は自分の幸運にほとんど罪悪感を抱いていた。彼女は、自分がこの家族からはなれてゆく前に、シビルにできるかぎり多くのーつまり、外部の正解や彼女の内部の人々が許す限り多くのー幸せな日々をもたらすように取りはからうことにしようと心に決めた。かわいそうなシビル、とビッキーは思った。